壁一面ではない。270度——視界のほぼすべてが映像で包まれる。そして、その映像に触れると、空間が反応する。
東京・麻布の体験型焼肉割烹「和ノ音」に、MIRASISONEがプロジェクションマッピングを導入しました。270度に広がる壁面投影とテーブルプロジェクションマッピングを組み合わせた、触れて遊べるインタラクティブな演出を取り入れた最新の体験型焼肉割烹です。
日本の食材と映像が交わる、ここにしかない体験。厳選された和牛と旬の食材を、四季の映像が包み込む270度の没入空間で味わう——「食べる」と「体験する」の境界がなくなる新しい食の形です。
渋谷「Whitely 小人シェフ」で培ったテーブルPMの技術を、焼肉割烹の世界観で再構築した本事例。この記事では、演出の設計思想から技術的なポイントまでを解説します。
プロジェクト概要
- 店舗:和ノ音(東京・麻布)
- 業態:体験型焼肉割烹
- 導入エリア:個室ダイニング空間(270度壁面+テーブル面)
- 演出内容:270度壁面プロジェクションマッピング+テーブルプロジェクションマッピング+インタラクティブ演出
- 体験の特徴:触れて遊べるインタラクティブ演出×日本の食材と映像が交わる没入型食体験
- 制作:MIRASISONE(企画・3DCG映像制作・空間演出設計・施工を一貫対応)
270度壁面投影——「見る」から「包まれる」への転換
なぜ270度なのか
通常のプロジェクションマッピングは壁面1面(正面のみ)への投影が一般的です。しかし、人間の水平視野角は約200度。正面1面の投影では、視界の大半が「映像のない普通の壁」として残ります。
和ノ音では、正面+左右の3面を連続した映像で包む270度投影を採用しました。席に着いた瞬間、視界の大部分が映像で満たされ、「映像を見ている」のではなく「映像の中にいる」感覚になります。
この没入感は、料理への期待を高める「舞台装置」として機能します。和食のコースが始まる前から、空間全体が料理の世界観を予感させる映像で満たされている。この「入った瞬間の没入」が、食体験全体の満足度を大きく引き上げます。

和の世界観を映像で表現する
和ノ音の映像コンテンツは、日本の四季・自然・伝統美をモチーフにしています。
- 春:桜が壁面全体を覆い、花びらがゆっくりとテーブルの上に舞い落ちる
- 夏:清流と蛍。水面の揺らぎが壁面を流れ、テーブル上に水の光が映る
- 秋:紅葉と月。赤・金・橙のグラデーションが空間を染める
- 冬:雪景色と松。静寂の中に雪が舞い、凛とした空気感を演出
映像は季節ごとに切り替わるため、リピーターにとっても「次の季節はどんな映像だろう」という再訪動機になります。
テーブルプロジェクションマッピング——料理と映像の共演
Whitely小人シェフからの技術進化
MIRASISONEは渋谷「Whitely 小人シェフ」で、テーブルプロジェクションマッピングの技術を確立しました。和ノ音では、そのノウハウを和食の繊細な盛り付けと器の美しさを活かす方向に進化させています。
Whitely小人シェフでは3DCGキャラクターが主役でしたが、和ノ音では料理そのものが主役です。映像は料理を引き立てる「余白」として設計されており、料理が運ばれてくると映像が控えめになり、食べ終わると次のシーンが展開される——料理のペースに映像が寄り添う設計です。
器の位置に映像が追従する
和ノ音のテーブルPMでも、Whitely同様にテーブル上の器の位置をリアルタイムに検知し、映像が器を避けて展開される仕組みを採用しています。
器を動かすと、その動きに合わせて映像がリアルタイムに変化する。この「映像が器に寄り添う」体験は、テーブルの上に「生きている映像」がいるような感覚を生み出します。

270度壁面+テーブルPMの連動設計
壁面とテーブルが「ひとつの世界」になる
和ノ音の演出で最も技術的に挑戦的だったのは、270度壁面の映像とテーブル上の映像を完全に連動させることです。
壁面に桜が舞えば、テーブルの上にも花びらが落ちてくる。壁面に水の流れが映れば、テーブル上にも水面の光が揺れる。壁面とテーブルが分断された別々の演出ではなく、空間全体がひとつの連続した世界として機能する設計です。
この連動を実現するために、複数台のプロジェクター(壁面用+テーブル用)を1つの制御システムで同期させています。映像の切り替えタイミング、色温度、明るさがすべて統一されることで、「壁もテーブルも同じ空間の一部」という没入感が生まれます。

コース進行と映像シーンの同期
和ノ音のコース料理は、前菜から甘味まで複数の皿で構成されます。映像は各皿の提供タイミングに合わせてシーンが切り替わる設計になっています。
前菜では繊細な草花の映像、焼物では炎を思わせるダイナミックな映像、甘味では月と静寂の映像——料理の温度感・食材の季節感と映像の世界観が一致することで、「この料理をこの空間で食べる意味」が生まれます。
「東京・麻布」という立地の意味
東京の高級飲食市場での差別化
東京・麻布は、高級飲食店が密集する日本有数のエリアです。料理の質だけでは差別化が難しい市場において、270度の没入型空間演出は他店にない唯一無二の体験価値になります。
特に麻布エリアは接待需要が高く、「特別な空間で食事をしたい」というニーズが顕在化しています。270度のプロジェクションマッピングは、まさにこの「特別感」を可視化する手段です。
SNS拡散と予約獲得の設計
和ノ音の演出は、来店者が「撮りたくなる」瞬間を意図的に設計しています。270度の壁面映像は、どの角度からスマホを構えても「映え」が成立する構図です。テーブル上の料理と映像が一体化したシーンは、「ここでしか撮れない写真」を生み出します。
この「撮影→SNS投稿→新規来店」のサイクルは、Whitely小人シェフで実証済みのメカニズムです。和ノ音でも同様のサイクルが機能し始めています。
導入の技術的ポイント
- プロジェクター構成:270度壁面用に複数台+テーブル用に1台の計複数台構成。壁面の継ぎ目が見えないよう、エッジブレンディング(映像の重なり部分を自然に融合させる技術)を適用。
- 照明設計:プロジェクションマッピングの映像品質を確保するため、店内照明との両立を精密に設計。料理を照らす照明と映像の輝度バランスが崩れると、料理が暗く見えるか映像が飛ぶかのどちらかになるため、料理を美しく見せる照度と映像の没入感を両立する最適値を現地テストで追い込みました。
- 音響設計:映像と連動する環境音(水音・虫の声・風の音等)を控えめに再生。和食の静寂さを損なわない音量設計にしています。
- 運用設計:季節ごとの映像切り替えはMIRASISONEがリモートで実施可能。店舗スタッフが映像操作を意識する必要がない設計にしています。
触れて楽しむインタラクティブ体験
和ノ音のプロジェクションマッピングは「見るだけ」では終わりません。壁面やテーブルの映像に触れると、映像がリアルタイムに反応するインタラクティブ体験が組み込まれています。
壁面タッチで季節が動く
270度壁面に投影された映像に手を触れると、その場所から新しいエフェクトが生まれます。桜の映像に触れると花びらが散り、水面の映像に触れると波紋が広がる。自分の動作で空間の映像が変化する体験は、「見ている」から「参加している」への転換を生みます。
来店者が映像に触れて遊ぶ姿は、そのままSNS映えする動画コンテンツになります。「触ったら映像が変わった!」という驚きの瞬間は、静止画以上に動画での拡散力が高く、Instagram ReelsやTikTokでの自然な拡散を生み出します。
テーブル上のインタラクション
テーブルに投影された映像も、手の動きに反応します。テーブルの上に手を置くと光が集まり、手を動かすと光の軌跡が残る。料理を待つ時間が「遊びの時間」になる設計です。
この仕掛けは、特に接待や記念日の食事で効果を発揮します。ゲストが思わず映像に触れて笑顔になる——その瞬間が、食事の場全体の雰囲気を温めます。
インタラクティブ体験が「記憶に残る理由」
人間は「見ただけ」の体験より「自分が関与した」体験のほうが、記憶に強く残ります。心理学でいう「自己参照効果」です。
和ノ音のインタラクティブ演出は、この原理を空間演出に応用しています。壁面に触れた瞬間、テーブルで光を追いかけた瞬間——自分が「体験の当事者」になった記憶が、「あの店にまた行きたい」というリピート動機に直結します。
MIRASISONEの飲食店向け空間演出
MIRASISONEは、Whitely小人シェフ(渋谷)と和ノ音(麻布)の2つの飲食店導入実績を持つ、飲食店特化のプロジェクションマッピング制作会社です。
- 企画・体験設計:料理と映像の関係性を設計し、「食体験全体」を演出
- 3DCG映像制作:自社制作。和の世界観からキャラクターアニメーションまで
- テーブルPM技術:器の位置検知・リアルタイム映像連動の独自技術
- 270度・360度壁面投影:複数プロジェクターのエッジブレンディング対応
- 運用サポート:季節映像の切り替え・メンテナンスをリモート対応
